数学

複素関数の微分~コーシーリーマンの関係式のいちばん直観的な導出

ここでは、複素数の関数の微分に興味を持った方のために、それがどんなものかと、

複素関数が微分できるための条件となる、コーシーリーマンの関係式の導出をします。
「証明」じゃなくて「導出」って言いたい

ただ、ここでは他の記事とは違う、よりちゃんとした(?)やり方で導出してます。

複素関数の微分とはどんなか

まず、複素関数 \( f(z) \) の微分は, \( \displaystyle \frac{df}{dz} \) と、「\( z \) の無限小変化で\( f(z) \) の無限小変化を割ったもの」です。

\( z, f(z)\) が実数であれば、ふつーの実関数の微分と同じです。

ただ、この微分 \( \displaystyle \frac{df}{dz} \) はどんな \( f(z) \) に対して定義できるわけではないです。

複素関数が \( f(z) \) が「微分できる」とは、直感的に言うと、
複素数平面の360°、どの方向で微分をしても同じ値になる」です。

例えば、以下の実部をとるだけの関数 \( f(z) \)は、その条件を満たしません。よって「微分できない」です。

\( f(z) = x~~~~~(z = x+ iy,~~~x, y : z\text{の実部, 虚部}) \)

なぜなら、
実軸に平行な方向に関してはいつも, \( \displaystyle \frac{df}{dz} = \displaystyle \frac{dx}{dx} = 1 \) ですが、
虚軸に平行な方向に関してはいつも, \( \displaystyle \frac{df}{dz} = \displaystyle \frac{0}{i \times dy} = 0 \) だからです。

これに対して、同様に考えて、 \( f(z) = z \) は実軸、虚軸どちらに平行な方向の微分でも
\( \displaystyle \frac{df}{dz} = 1 \) となるはずです。

また実は、実軸、虚軸に平行ではない方向の微分でも、いつも \( \displaystyle \frac{df}{dz} = 1 \) となります。
つまり、「微分できる」です。

複素関数が微分可能であるとき、なぜか、その複素関数は正則であると言います。

なんでこんな風に言い換える必要があるんですかね?ふつうに「微分可能である」って言えば済むんじゃないと思うんですが、、、
方向によって微分の値が1つに決まらないなら、もうそれは「微分不可能」って呼んでしまって。
実関数でもそうしてるやんか
まあ僕が思いつかないだけで、「正則」と言い換えないと何か不都合があるのかもしれないです

では、一般にどんな \( f(z) \) が微分できるのでしょう(正則なのでしょう)?
つまり、どの方向で微分しても値が変わらない条件はなんでしょうか?

複素関数が微分できる(正則である)条件、コーシーリーマンの関係式

複素関数 \( f(z) \) が微分できる(どの方向で微分しても値が変わらない)かどうか考えるには、
以下のような3つの手順を踏めばいいですよ

  1. 微小変化 \( \Delta f \) を求めて、
    \( \Delta z \) で割って、微分 \( \displaystyle \frac{\Delta f}{\Delta z} \) を求める
  2. 微分 \( \displaystyle \frac{\Delta f}{\Delta z} \) を微小変化 \( \Delta z \) の偏角 \( \theta \)
    (微分の方向)を使って表してみる。
  3. \( \displaystyle \frac{\Delta f}{\Delta z} \) が \( \theta \) によって変わらない
    って条件が
    \( f(z) \) が微分できる(正則である)
    って条件になります

ではさっそく、手順1に入りまして、
まず、複素関数 \( f(z) \) を以下のように実部 \( f(z) \) と虚部 \( f(z) \) に分けてみましょう

\( f(z) = f(x, y) = u(x, y) + i v(x, y) \)

ここで \( f(z) \) が \(z\) の関数であるということは、\( z \) の実部\( x \)、虚部\( y \) の関数である(\( f(z)=f(x, y) \) )ということに注意しましょう。
言い換えれば、\( x , y \) を決めれば \( f(z) \) の値が1つに決まるということです。

複素関数 \( f(z) \) の微分 \( \displaystyle \frac{\Delta f}{\Delta z} \) の分子の微小変化 \(\Delta f \) について、

\( f(x + \Delta x, y + \Delta y)
\\ = u(x + \Delta x, y + \Delta y) + i v(x + \Delta x, y + \Delta y)
\\ =u(x , y) + a \Delta x + b \Delta y + i \left( v(x , y) + c \Delta x + d \Delta y \right)
\\ =f(x, y) + (a + i c) \Delta x + (b + i d) \Delta y \)

であるので、

\( \Delta f = f(x + \Delta x, y + \Delta y)- f(x, y)
\\ ~~~~~= (a + i c) \Delta x + (b + i d) \Delta y \)

となります。ここで簡単に見えるために、

\( a = \displaystyle \frac{\partial u}{\partial x},~~b = \displaystyle \frac{\partial u}{\partial y},~~c = \displaystyle \frac{\partial v}{\partial x},~~d = \displaystyle \frac{\partial v}{\partial y},~~ \)

とおきました。\( \frac{\partial}{\partial x} \) は、\( x\) についての偏微分(その他の変数、\(y\)を変化させず、\(x\)だけの微小変化に対する微分、「偏った」微分)です。

ここまで、理解できていない方はおそらく以下の「補足」のことを知る(復習する)必要があるかと思います。

補足

一般に、多変数関数 \( f(x_1, x_2, x_3, ... , x_n) \) の微小変化 \( \Delta f \) は、

\( \Delta f = \displaystyle \frac{\partial f}{\partial x_1} \Delta x_1 + \frac{\partial f}{\partial x_2} \Delta x_2 + \cdots + \frac{\partial f}{\partial x_n} \Delta x_n \)

と表されます。微小な変化の範囲では、連続な関数 \( f(x_1, x_2, x_3, ... , x_n) \) の値は
\( \Delta x_1, \Delta x_2, ... , \Delta x_n \) に対して直線的に変化しますから、、


次に手順2に入りまして、
微分を実軸とのなす角が \(\theta\) の方向でやるとして、

\( \Delta x = \Delta r \cos \theta,~~~~~\Delta y = \Delta r \sin \theta \)
\( \Delta z = \Delta x + i \Delta y = \Delta r e^{i \theta} \)

と表してみましょう。\(\Delta r >0 \) はもちろん微小量です。

そうすると、微分は、以下のように表せます。

\( \displaystyle \frac{\Delta f}{\Delta z} = \displaystyle \frac{(a + i c) \Delta r \cos \theta + (b + i d) \Delta r \sin \theta }{\Delta r e^{i \theta} }
\\ = e^{- i \theta} \left\{(a + i c) \cos \theta + (b + i d) \sin \theta \right\} \)


最後に手順3に入りまして、
求めた微分が、方向(\( \Delta z \)の偏角 \( \theta \))に依らないということは、任意の \( \theta \) に対して、
\( \displaystyle \frac{d}{d \theta } \left( \frac{\Delta f}{\Delta z} \right) \equiv 0 \) でなければなりません(\(\equiv\)はいつも\(=\) という意味)。つまり、

\( \displaystyle \frac{d}{d \theta } \left( \frac{\Delta f}{\Delta z} \right)
= e^{-i \theta} \left[ \left\{ (b+c) + i(d-a) \right\} \cos \theta
\\ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ + \left\{ (d-a) - i (b+c) \right\} \sin \theta \right]
\\~~~~~~~~~~~~~~~ =e^{-2 i \theta} \left\{ (b+c) + i(d-a) \right\}
\\~~~~~~~~~~~~~~~ \equiv 0 \)

けっきょく、

\( d-a=0,~~~~~b+c=0 \)

つまり、

コーシーリーマンの関係式

\( \displaystyle \frac{\partial u}{\partial x}-\frac{\partial v}{\partial y}=0,~~~~~\frac{\partial u}{\partial y}+\frac{\partial v}{\partial x}=0 \)

が導かれるわけですよ


こうして、直観的に\(f(z)\) が微分ができる(正則である)条件、コーシーリーマンの関係式が求まったわけですが、

ちなみに他の教材や記事では、任意の微分の方向 (任意の \( \theta \) )に対してではなく、
実軸、虚軸に平行な2方向に対しての微分のみを求めて、それらが一致するという条件から、
コーシーリーマンの関係式を求めています。それでも同じようにコーシーリーマンが出るんですが、なぜでしょう?

「なんで2方向だけ??実軸、虚軸方向だけの微分が等しいってこと以上のことは言ってないよね?」って納得いかないです。
そして今も理解してなくて、直観的なことは言えず、、、計算したらそうなるとしか、、、

(きもちわるい終わり方)

読んでいただきありがとうございました。お疲れ様です。

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