むかし大学生のときに、微分方程式の定数変化法について、
こんなことをしていいのか、これで本当に一般解が求められているのか
と考えたことがある。
一度分かってしまえば、当然のことであるようなことなのだが、
割と悩んだことなので、なぜちゃんと一般解が求まるか説明します。
なにわともあれまず、
定数変化法とは
定数変化法の使い時、手順を知っている人はここは読み飛ばせます。
定数変化法は、非斉次な一階線形常微分方程式の解法として紹介されることが多いです。
(だけどそれに使い時は限りません。)
一般に一階線形常微分方程式は
y' + p(x)y = q(x)~~~~~(q(x) \not\equiv 0)
( \not\equiv 0 はずっと0ではないという意味) と表せます。
”線形”とは y^{(n)} の1次以下の項しか含まれていないこと、
”常”は独立変数が1つだけ(x だけ)
という意味である。
”斉次”は、文字通りには、 y^{(n)} についての”次数”が”同じ”であることなのだと思われますが、
ここでは、未知関数 y^{(n)} から成る項のみで、独立変数だけからなる項を含まないことを意味するようです。
(なんで?)
y' + p(x)y = 0 ~~~~~ は斉次で、
y' + P(x)y = q(x)~~~~~(q(x) \not\equiv 0) ~~~~~ は非斉次です。
また、僕は"非線形"の微分方程式に対して”斉次”という言葉が使われているのを見たことがありません。
( y'^2 + p(x)y^2 = 0 は次数が2で同じだから、”斉次非線形”と言えるんですかね? 知っている方がいらっしゃったらどうかご教授ください。)
q(x) \equiv 0 であったときの一般解(斉次解)は
y = C e^{-\int p(x) dx}~~~~~(C: \text{任意定数})
と求められますが、この定数C を関数 f(x) に置き換えることで、
"非斉次"なほう(q(x) \not\equiv 0)の微分方程式の解を求めます。これを定数変化法といいます。
具体的には、 y= f y_0~~~(y_0=e^{-\int q(x) dx}) を微分方程式に代入してみて、
f' = q(x) /y_0 \\~\Rightarrow f = \displaystyle \int q(x) /y_0 dx + C ~~~~~(C: \text{任意定数})
を得ることができて、結局
y= f y_0 = \left( \displaystyle \int q(x) /y_0 dx + C \right) y_0 ~~~~~(C: \text{任意定数})
が一般解となります。
では次に、本題の「なぜこれが一般解でいいのか?」という疑問を解決しましょう。
一般性が失われないこと
かつて初学者だった私にとって問題となったのは、
y= f y_0 と置くことが、解の形を制限しているように見えてしまったことだ。
よく考えてみると、この操作は特別な形の解に全く制限していないこと、言い換えると、
f y_0 は任意の関数を表現できる形であるということがわかる。
それに気付くためには以下のように考えればいい。
まず、微分方程式にy=f y_0 を代入することは、
それが満たされるという条件を f(x) に課す、
ということを意味することに注意しておこう。
まだ代入する前、つまり条件を課す前では
f = (\text{任意関数}) = (\text{任意関数})/y_0(x)
と表現できるのだから、
f y_0 = (\text{任意関数})
とすることができる。
つまり、y=f y_0 とした時点ではまだ関数形について何も決まっていないのだ。
それを微分方程式に代入して、つまり条件を課して f(x) の形を決める、
という定数変化法では、
全ての関数の形から、与えられた条件だけを満たすものを選び出しているのだから、
ちゃんと一般解が得られているのである。
次に何を思って、この定数C を関数 f(x) にしようと思ったのか、です。
何が狙いなのか
まあなんとなくわかるかもしれませんが、
積の微分によって出てくる余分な項によって、微分方程式が満たされるようにする
という狙いですよね。たぶん
なので、積の微分によって余分な項がわんさか出てきてしまう
高階の微分方程式には向いていないでしょう。
二階までなら許容範囲かな?
また、”定数を任意関数に変化させる”というよりも、
”任意関数と斉次解の積にする”というほうが本質的ということになります。
読んでくれてありがとうございますた。